三百54 ドイツの介護保険

【三百53 通院介助】に日記しましたが「介護サービスでは カバーされない!」ことを カバーする制度解決の方策の一つとして ドイツの介護保険に 家族がケアした場合の「現金給付」が有ることを思い出しました。 ものすごく共感出来る報告が有りましたので 超抜粋します。 関心ある方は「医療法人社団 悠翔会」「ドイツ医療介護視察報告⑤」をご覧ください。 悠翔会はすべてのクリニックが【機能強化型在宅療養支援診療所】+【在宅緩和ケア充実診療所】です。 報告書のアンダーラインは 僕の共感が強い部分です。

ドイツ医療介護視察報告⑤ 2019年6月15日 

ドイツの介護保険の給付額は、おそらく日本のものとそんなに変わらない。しかし、現金給付という選択肢を作ったことで、家族介護者の労働者としての権利を一定の範囲で保証するとともに、「近隣の助け合い」に対しても、一部現金で償還することが可能になる。

日本では、現金給付は「介護の社会化」という介護保険のコンセプトと違う(介護保険は、家族を介護労働から解放し、社会復帰させるためにある。現金給付は、結局、家族(主に女性)を介護労働に縛ることになる)という理由により、現金給付の制度化を見送った。しかし、実態は、家族は一定の割合で介護労働に関与せざるを得ない状況にある。介護離職もいまだに大きな社会問題であり続いている。また、家族介護の内容には介入が困難で、悲しい事件も時に発生する。あるべき論だけでは、理想を実現することは難しい・・・

日本は、自立支援とは言いながら、何がその人にとっての「自立」なのか、という議論もされないままに運動機能の強化がケアプランに組み込まれようとしている。本人の真のニーズとは乖離した支援が一方的に提供されているケースも少なくない。また、「介護の社会化」と言いながら、家族には一定の役割が求められる。そして「介護保険をなるべく使うな」という無言の圧力が、家族の活動と社会参加を妨げている。厳しい財政を鑑みれば、「介護保険をなるべく使うな」という主張はもちろん理解できる。しかし、そもそも「要介護度」は、その人のケアニーズを時間に換算し、それを現物支給するために必要な金額ではなかったのか。それを使うな、というのであれば、何のための要介護認定なのかわからない。

自助が大切だというのであれば、その人が自立できる環境が整えることを、まず前提として考えるべきではないだろうか。自立できない環境に放置したまま、サービス提供を抑制するというのは、手段と目的が完全に逆転していると思う。

(二百59 自転車”考”の末尾の日記した「こう言った状況/環境を改善せずに取り締まり強化をするって言うのは、チョット違うんじゃないと思います」の思いに 通じます)

日本においては、本来の意図とは異なる形で介護保険制度が運用され、介護家族も疲弊している。家族の関与を前提として考えているのであれば、現金給付という選択肢をもう一度検討してみてもよいのではないかと思う。ドイツと同様、家族単位の努力と工夫で介護サービスの利用が抑制できた分は、現金給付という形で家族にフィードバックする。これはある種のインセンティブにもなる。また、そうでなければ、介護サービスは原則包括報酬とし、家族に負担をかけない形で、24時間の在宅ケアが提供できる体制の構築を地域単位で目指すべきではないだろうか。

ドイツの介護保険制度の(超)概略

日本の介護保険制度に似ている点: ・介護が必要になったら要介護鑑定(認定)を受ける。 ・要介護度に応じた給付を受ける。 ・給付の上限を超えた部分は自己負担。 ・在宅介護が基本(75%)、在宅での生活継続が困難になった場合に施設介護(25%)が選択される。 ・要介護度の認定に不服があれば申し立てをして、再審査を受けられる。 など。

日本と異なる点: 

・年齢制限がない:年齢制限はない。医療保険に入っていれば、自動的に介護保険にも加入。保険加入期間が2年以上あれば、だれでも介護保険サービスを利用できる。

「現金給付」が選択できる:家族や友人によるケアに対する現金給付がある。要介護度に応じて月々の固定給付を受け取れる。家族介護は「労働」として認められ、現金給付にとどまらない社会保障(減税や年金保険料の介護保険からの支払いなどの補助がある)の対象となっている。 介護者は、1週間に2回以上、少なくとも10時間以上、家族の介護に従事している者と定義されており、 家族介護には、一定の品質管理が必要であり 介護研修義務が生じる。 さらには適切なケアが行われているか 定期的なチェックが行われる。 

・「使い切る」前提の介護保険給付: ドイツでは、要介護度はその人のニーズに応じて認定されたもの。その人のケアニーズの一部に対する「補助」という位置づけで、すべて利用されるということが前提となっている。 現物給付(専門職による介護サービスの提供)を選択した場合でも、使いきらない部分は、家族に対する現金給付として受け取ることができる。 

・社会扶助のしくみ:日本では収入が不足し、資産が底を尽きると「生活保護」ということになる。ドイツでは、まずは家族による扶養義務が生じる(本人の支払い能力が限界に達した場合、家族(配偶者と直系の子供たち)に支払い義務が生じる)、それでも足りない場合に「社会扶助」の対象となる。