二百26 老いを 認知する

© AERA dot. 提供

精神科医:片田珠美氏、香山リカ氏 談話

「60代になると初老期うつ病を発症しやすい。何らかの喪失体験がきっかけになることが多い」「経済的損失があったり、思い通りに体が動かせなくなったりとかが、喪失体験と受け止められやすい」

「それまで社会的に活躍していた男性だと、年齢的にも体力的にも、これからだんだんと高齢者になっていく中で、どのように自分を高齢者として着地させていくのかが大きな課題になります」 周りから「明るくて元気でタフ」「頼りがいがある」「いつまでも若い」というイメージで見られている人ほど、「老いてきた自分をなかなかみせられない」という葛藤が生じやすい。

「60代でも、まだまだ元気で若く、新しいチャレンジをするというのは理想の生き方としてありますが、60代なりの老いの兆候や体の不調というのは誰にでも出てくるもの。少なくない人が年齢に関係なく、若さを保っている時代だからこそ、自分のイメージと現実のギャップに、想像以上に苦しんでいる人がいると思います」「老いの兆候があると、ものすごくショックを受けたり、それを自分で否定しようとしたりする人は少なくありません。『老いていく自分を自分で認められない』『いっそのことここで命を絶って終わりにしたほうがいい』と考えてしまう」

「エイジング(加齢)によって、体に痛みが出てきて動かしにくくなる。元気で明るくと思っていても、気分が上向かないこともある。肉体は衰え、気力もなくなって、記憶も低下するというのは、ある意味では自然の摂理です。いつまでも若い時みたいに元気で明るくいられるわけではありません。難しいことですが、そういう現実を少しずつ受け入れていくことが大切」「60代、70代ということを自分で認めて、あんまり無理せずに老いていってもいいんじゃないかと思います。老いていく自分も面白いんじゃないの、と思います。うまく、老いというか老人に着地していくことも必要なんじゃないかと思います」

 ともに老いていく伴侶はどう対応したらいいのだろうか。

「元気で若いイメージのまま、ポキッと折れてしまう人もいるので、少しでも歳を感じさせるような行動とか、見た目を含めた兆候とか、足腰が弱くなるとかが出てきたら『一緒に老いるんだし、当然じゃないの』と受け止める。夫と一緒に少しずつペースを緩めて生活していくくらいがいい。『老いたあなたもステキよ』と、変化を楽しむ余裕が必要です」

元情報:AERAdot.編集部・上田耕司  勝手に編集:一寸手伝亭・若林明