三百00 どうする ”マスク”

桧山珠美(コラムニスト)

読売新聞【アンテナ】テレビのチカラで”脱マスク”  2023/02/16

来月13日からマスクの着用が原則「個人の判断」に委ねられることになった。それを受けて、多くのニュースや情報番組は、街の人に「マスクを外すか否か」を尋ねていた。すべてを見たわけではないが、おおむね、「外したくない」という意見が多かったように思う。 確かに、この3年間ずっとつけてきたマスクを、急に「個人の判断」で外してもいいと言われても、多くの人は戸惑うだろう。しかも、「個人の判断」といいつつ、マスク着用の指針として、“通勤ラッシュなどの混雑した電車やバスではマスク着用を推奨する”とか“全員の着席が可能な新幹線や高速バスなどでは外すことを容認する”などと言われれば、ますます混乱してしまう。  そういえば、遡ること昨年10月、岸田総理が所信表明の演説で、「屋外でのマスクは必要ない」と明言したが、その後、特に屋外でマスクを外す人が増えたかといえばそうでもなかったような。  一刻も早くマスクを外し、この煩わしさから解放されたいと思う一方で、丸3年間、毎日つけていたものを急にやめることには抵抗も不安もあり、相当の勇気がいる。  実際に街の人のインタビューのなかでも、「周りを見て考える」という人が多くいた。自分がどうしたいのか、ではなく、周りはどうするのか、を気にするのが、いかにも日本人的というか。そこが日本人の良いところでもあるのだが……。  「個人の判断」などというあいまいな言い方では、“脱マスク”は遅々として進まないのでは、と危惧する。そこで思ったのだが、この状況を打破できるのは、テレビなのではないか、と。  たとえば、現在、街歩きのロケ番組などを見ていると、基本はマスクをしていて、何か食べる時は、マスクを素早く外して口に入れ、マスクをしてから味の感想を言う、というようなことをやっている。が、これが見ていて落ち着かないし、マスクを何度も触るのはかえって不衛生なのではないか、と常々思っていた。  だが、そうせざるを得ないのは、「このご時世にマスクをしないとは何事か」というお叱りが来るかもしれず、ちゃんとコロナ対策をしていますよ、というポーズのようなものか、と。  来月13日からは、そんなポーズはいち早くやめ、マスクなしでの食レポをお願いしたい。スタジオ観覧者もマスクを外し、笑い顔を見せてほしい。できれば、スタジオのアクリル板も取っ払ってみてはどうだろうか。 そんなふうに、テレビが“脱マスク”を具現化していくことで、視聴者も徐々にマスクなしに慣れ、マスクを取っても大丈夫、となるかもしれない。テレビのチカラに期待したい。 

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